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トンボの採卵の方法 (野外 不均翅亜目)

このページの最終更新日は2009年7月25日です.

採卵法1  野外での採卵(均翅亜目) 

 

ムカシトンボ科 ムカシトンボは,河川の 源流域の流れに生育する各種の植物に産卵しますので,産卵植物を持ち帰ります.茎だけを持ち帰った場合は,卵を取り出しておかないと植物が腐って卵も死にます.取り出した卵は水中に入れておきますが,やや大きめの容器に入れます.ウワバミソウは根が少しあれば,持ち帰った後,水を浸した瓶などに 入れておくと枯れることはありませんので,茎から孵化する様子なども観察できます.
写真:ムカシトンボの産卵 ウワバミソウに産卵しているところです. 写真:ムカシトンボ産卵痕  植物はウワバミソウ
 

サナエトンボ科 水辺に産卵にきた♀を採集し採卵します.タベサナエ,オジロサナエ,ダビドサナエなどでは卵を次々出しますので,水を入れた小容器にとります.水辺の植物や石の上で卵塊 (らんかい:多くの卵が集まったかたまり)を出してから水面上に飛来する ホンサナエ,キイロサナエは,卵塊を出している時に捕まえて採卵します. オナガサナエ,アオサナエなど水面上でホバリングしながら,小さな卵塊を次々水面に落とすトンボは,卵が水面に達するまでに,目の細かい網などで卵をキャッチします.ウチワヤンマ,タイワンウチワヤンマは水面 にあるアオミドロ,水草などに産卵しますので,産卵後,卵の付着(ふちゃく)した水草などを採集します.

写真:アオサナエの産卵 (6月) 流れのあるところの上空30cmぐらいのところでホバリングして卵塊をつぎつぎ落としているところです. 写真:アオサナエの卵 1:アオサナエの卵塊  水面に達する前に目の細かな網で受け取ったアオサナエの卵塊です.2:拡大図 卵が水中に入ると小石などに強力に付着する付属物が展開します.
写真:ホンサナエ 流れの 近くの草の上で卵塊を出しているところです. 写真:オナガサナエ(8月) 流れ のあるところの上空30cmぐらいのところでホバリングしながら,卵塊をつぎつぎ落としているところです.
写真:ウチワヤンマの卵(7月)池の周囲のアオミドロに産卵したものです. 写真:ウチワヤンマの卵 卵の後端 (こうたん)からでている丈夫な長い糸状のもので水草などに付着しています.
 

オニヤンマ科 湿地のごく緩やかな流れの ,浅い砂地などに産卵管を突き刺すようにして産卵します.産卵中はあまり逃げませんので,産卵した場所を近くからしっかり見ておき,産卵後産卵したあたりの砂を持ち帰ります.あまり多く持ち帰ると,卵を探すのが大変ですので,できるだけ正確に見ておき ,少量の砂と水を持ち帰ります.持ち帰ったあと,その砂を平たい容器に移し,水を加えて1日ぐらい経過してから卵を探します.はじめは卵か砂粒か見分けがつきませんが,1日 後には卵はオレンジ色に変化しますので,砂の中から卵をスポイトで吸い取ります.

写真:オニヤンマの産卵 (9月) 写真:オニヤンマの卵 卵を取り巻くゼリー状の物質に砂粒がくっついています.発生 (はっせい)を調べるにはこのゼリー状の物質を取り去って観察します.オニヤンマのゼリー状の物質は簡単に取れます.
 

ヤンマ科 ほとんどのヤンマ科はろ紙 やティッシュペーパーに産卵します.ろ紙 やティッシュペーパーに産卵しないアオヤンマは産卵痕(さんらんこん:産卵したときに残るきずあと)がはっきり残るので産卵痕のあるヨシの茎などから取り出します.

写真:アオヤンマの産卵 (6月) ヨシ原の多数のヨシの中で,産卵痕を見つけるのは容易ではありませんが,太さが3mmから5mmぐらいのヨシを1本ずつ見ていく と案外見つかるものです. 写真:アオヤンマの産卵痕 ヨシの茎には産卵痕に似た黒っぽい点がついているものがありますが,産卵痕はざらついているので,手で触るとすぐわかります.
写真:アオヤンマの卵  1つの産卵痕から約50卵が産みこまれていました.卵はこのあと, 胚反転期までに急に大きくなりますので,茎の中は卵がぎっしり詰まってしまいます. 写真:サラサヤンマの産卵(6月) 湿地の落ち葉,コケ,朽木, 泥などに産卵します.泥に産卵する種はすぐ近くで見ていても卵が見つかりにくいので,確実に卵を得るには♀を捕まえて,ろ紙や朽木に産卵させます.
写真:オオルリボシヤンマの産卵 水面の水草や朽木 (くちき)に産卵します. 写真:ギンヤンマの産卵 ギンヤンマは 普通,連結産卵をしますが,単独でも産卵します.
 

エゾトンボ科 トラフトンボは,池にヒシが伸びだす5月頃に産卵をします.卵は白っぽい紐 (ひも)のようになった卵塊の中に入っています. この卵塊を持ち帰ります.その他のエゾトンボ科は産卵中の♀を捕まえ腹端を水中につけ て採卵しますが,コヤマトンボ,キイロヤマトンボ,オオヤマトンボはこの方法では採卵ができないことが多く,採卵の難しい種です.

写真:トラフトンボの卵塊  池にヒシが伸びだす頃に産卵をします.白っぽいひも状のものが卵塊です. 写真:トラフトンボの卵 白っぽいひも状の物質の中に卵が並んで入っています.
 

トンボ科 産卵中の♀を採集し,生殖弁 (せいしょくべん)のある腹端を小容器の水に入れると卵を出します.この方法で採卵できないコシアキトンボ,コフキトンボ ,アメイロトンボは卵を産みつけた植物などを採集します.

写真:コシアキトンボの産卵 水面に横たわる植物の茎,枯れ木などに繰り返し産卵します. 水面より少し上でも湿った場所なら産卵 します. 写真:コシアキトンボの卵 産卵する適当なばしょには多数の卵が積み重なるように次々うみつけられます.産卵 直後は白っぽいですが,時間が経過すると褐色に変化します.
写真:コシアキトンボの卵 卵は植物の葉などにしっかりとくっついています.コフキトンボの卵とよく似ています. 写真:コフキトンボの卵 水面に倒れたガマの葉に産みつけられた卵です. コフキトンボは水面よりほんの少し下に産卵します.コシアキトンボの卵より少し小さく,色は少し薄いですがよく似ています.

必要数採卵したら,野外で採卵したトンボは,その場で逃してやりましょう.家に持ち帰ったトンボも,採集地が近いときは元に戻してやりましょう.生きていればまだまだ産卵します.

採卵法1  野外での採卵(均翅亜目)