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羽化殻の採集 このページの最終更新日は2001/12/18です.
羽化の例写真A:アジアイトトンボ 池に生育する植物や周囲の色々なものにのぼってきて羽化します.写真B:グンバイトンボ この場所は河川の中流域です.羽化は川岸の草やコンクリート壁などにつかまって羽化します.近畿地方では5月上旬から6月上旬に羽化するものが多いようです.写真C:オオアオイトトンボ 羽化は午前中に池の中や周囲に生育する木や枯れ木で行います.近畿地方では6月から7月に羽化するものが多いようです.写真D:ムカシトンボ 岡山県立森林公園東 1999年5月7日撮影) 幼虫は山地の渓流に生息していますが,羽化する前には水から出て,近くの落ち葉や石の下で過ごし,近畿地方では4月下旬ころ,流れからやや離れた場所で羽化します. トンボが羽化する時,幼虫時代をすごした水中から出て,草や木などにつかまりトンボになりますが,その時の羽化殻(抜け殻)はそのままにしておくと,自然にこわれてなくなってしまうものです.羽化殻が見つかれば,そこが発生地であることは確実です.羽化殻があれば、その特徴から種名がわかります.羽化殻なら標本も簡単にできます.フィルムケースなどに入れると壊さずに持って帰れます. 羽化殻も大切なトンボの記録ですので採集年月日,採集場所,採集者などできるだけ詳しく書いておきたいものです. 採集は幼虫が生息している水域の近くの土,草木,石,岩,コンクリート壁などを,羽化期に探せば見つかります.ときには水域から離れたり,河川では若齢幼虫や成虫が見られる場所よりもかなり下流で羽化する種もあります.羽化にかかる時間や羽化する時刻は天候や気温によっても変化します.
写真E:ムカシヤンマ 幼虫は山地の水が滴り落ちる斜面に作った穴の中や,コケの下などに生息していますが,羽化殻はそのような場所の近くの,水がかからない場所で見つかります.近畿地方では4月下旬から5月上旬頃に羽化します.写真F:ナゴヤサナエ 成虫が見られる場所よりかなり下流で羽化しています.写真G:タベサナエ 近畿地方ではサナエトンボの中で最も早く4月上旬に羽化が始まります.緩やかな流れの川,水路,流れの水が流れ込む池などで水面に腹部の先端が水つかるぐらいの高さのところで羽化しているのが見られます.写真H:ヒメクロサナエ ムカシトンボが生息する河川上流域で,付近の石や流木などで羽化しています.近畿地方では5月に羽化します. 気温にもよりますが,ヤンマ科やトンボ科の多くは夜間に羽化します.サナエトンボ科やイトトンボ科では,明るくなってから羽化するものが多いので,羽化しているところを観察することが出来ます. 羽化殻を採集するときも,羽化しているトンボが近くにいないかをよく確認して,踏みつぶしたりすることのないよう十分注意します.無事羽化してトンボが飛びったったあとの羽化殻は採集しておきます.
写真I:オニヤンマ 幼虫は平地から山地の小さな流れ,湿地,滞水などに生息していますが羽化殻はその近くで見つかります.水域からやや離れた数mの高さの木の幹で見つかることもあります.写真J:アオヤンマ 幼虫はヨシ(アシ)やガマなどが密生した池や湿地状の浅い水域に生息しています.羽化はそのような植物の茎などにつかまり行います.近畿地方では5月上旬から羽化が始まります.写真K:ルリボシヤンマ 池の周囲に生えた草の茎で羽化しています.ヤンマ科は夜間に羽化するものが多いのですが,時々,朝明るくなってから羽化するものもあります.写真L:トラフトンボ 近畿地方では4月中旬から池の周囲の植物などで羽化が見られます.
写真M:キイロヤマトンボ 兵庫県篠山市 1999年6月13日撮影)河川中流域の川岸の枯草で羽化しています.近畿地方では数があまり多くありませんが6月ごろ羽化します.写真N:シオヤトンボ 兵庫県西宮市 1998年4月28日撮影) 幼虫はは平地から山地の湿地状のところに生息しています.近畿地方では4月上旬から羽化が見られます.写真O:ハッチョウトンボ兵庫県西宮市 1999年6月8日撮影) 生息地は日当たりのよい湿地です.そこに生育する植物にのぼってきて羽化します.丘陵地で5月上旬から羽化し,低山地では少し遅れて羽化します.写真P:アキアカネ 兵庫県芦屋市奥山石島池 1997年9月20日撮影) 池の周囲に生えた細い草の茎で羽化しています.アカトンボは夜間に一斉に羽化することが多いのですが,写真のように羽化が遅れて,朝明るくなってから羽化するものもありますので,その羽化殻をもとに他の羽化殻を判定すると確実です.
羽化殻採集のよいところ 生態系を乱すことがありません.数の少ない種では成虫を採集することによりその種が絶滅する危険がありますが,羽化殻採集ではその心配がありません. 成虫ではどこからか飛来,ということも多いですが,羽化殻であれば,そこで幼虫が生育したので産地が確実にわかります. その種の羽化期,羽化の場所,生育している環境がわかります. 標本にするのが簡単.(そのまま保存できるし,色の変化もほとんど心配ありません.) 保存も簡単.(成虫ではカツオブシムシなどに食べられたりするので,防虫剤などを入れるなどの注意が必要ですが,羽化殻ではほとんどその心配がいりません.) 逃げないので採集は確実.ただしそっと捕まえないと肢などがとれます. 羽化殻採集の欠点 成虫の形態は羽化殻からはわかりません. 色が地味で成虫のような多彩な色をしていません. 成虫より分類の困難な種が多いようです. 動かないので探すのが難しい種があります. 羽化期間は普通成虫期間より短いので採集できる期間が短いことが多いようです. 羽化殻から種類を知る 一見して種名がわかる羽化殻も多いのですが,イトトンボのなかま,アカトンボのなかまなどでは区別が難しいものがあります.そのような種では,採集した年月日,場所の環境などを詳しく記録して採集しておきます.イトトンボ科では尾鰓(びさい:イトトンボやカワトンボなど尾の先のほうについている葉状の3枚の器官で水中の酸素取り入れる働きをしている部分)が幼虫分類の決め手ですが,尾鰓が無くなっていたり,乾いて縮まっていたりするので種名がわからないこともあります.そのような時は付近を観察すると,他に羽化しているものや,成虫が見つかりますので,それらも参考にします. 普通夜間に羽化するトンボでも,たまには明るくなってから羽化したり,羽化を失敗して飛べなくなり,残っているものもあります.羽化中のものが見つかれば,羽化後,羽化殻を採集し,種名がわからなかった羽化殻と比べて同定していきます. イトトンボ科は羽化中はどれも白っぽく,それぞれの斑紋や色がまだはっきりしていません.それに羽化後近づくと比較的早く飛び立ってしまうものが多く,種名がわかりにくいものです.それでも羽化後1時間もすると色や斑紋がややはっきりしてくるので,翅を触らないようにそっとネットでつかまえ籠などに入れておき,体色や斑紋がはっきりするのを待つなどの工夫が必要です.種類のわかった羽化殻は後で他の羽化殻を見分けるのに使います. 羽化殻の保存 羽化殻が乾燥していれば,そのままフィルムケースなどに入れ保存できます.泥がついていたり,曲がっていたりいろいろですが,それが自然の姿なので,そのまま標本にすればいいと思います.湿っている羽化殻は,必ず自然に十分乾燥させてから保存します.ケースに必ずデータを書いておきます.小さなトンボの羽化殻は壊れやすいので取り扱いには十分注意しますが,それでも何度も観察していると肢がとれたり,ばらばらになってしまいます.標本箱があれば成虫の標本と同じように昆虫針でとめておくといつまでも壊れずに保存できます.羽化殻は成虫や幼虫と違い,少し多く採集しておきます. |